仕事が早めに終わった日には、スタックががさごそと何かやっております。時折り僕も混ざりますけど、みなそれぞれに自分のギターを修理、改造していたり、新しく作っていたりするんですね。
T’sでは「一年に一本くらいは自分のギターを作っていいよ。」という話になっているんですよ。部品や木材も不良になってしまったものや使う当ての無いもの、販売できないものなど、なるべく会社の負担にならない範囲ならOK、自腹を切る必要はほとんどありません。
普段毎日大変な仕事ですが、そうやって楽しみを持つことで気持ち的に原点に帰ったり、モチベーションをキープしたりできますからね。「ギター製作学校の生徒に戻ったみたいだ。」なんていっている人もいます。
そうやって新鮮な気持ちでギターを作ってもらえば良いと考えているんですが、そんな中でひとつ大切な事があると思うんですね。『自分が良いと思うギターを作る。』という事と、『お客様が満足してくれるギターを作る。』ということは作業的には確かに似ているんですけれど、取り組み方も目的も全く違うっていうことです。
自己満足的な方向で極めて行っちゃうと、どこかでちぐはぐになっちゃってユーザーさんと共通点がなくなっちゃったり、こっちの言い分をおしつけちゃったりしがちです。もちろん僕もそんなことで苦い思いをした事が何度となくあります。
ギター製作を仕事にする事を夢見て、本当にたくさんの人が集まってきますが、その内の何割かの人は毎日毎日たくさんのギターを作っていくことに疑問を感じてしまい、中には比較的短期間でやめてしまう人もいます。でも途中で毎日毎日たくさんの人に喜んでもらっている、あるいは喜んでもらうために自分は頑張っているんだと感じる事が出来た人は、上を目指してまた毎日毎日ギターを作ってゆきます。
おすし屋さんも毎日毎日飽きもせずにおすしを握っていますもんね。でもきっと横目でお客さんの顔色や反応を気にして見ているんだと思いますよ。いつも「おいしい」と言ってもらう為には、前よりもおいしくなければいけないんだ、と聞いた事があります。
ん~なるほど。。。ですね。